パリ・オペラ座における教育Education

バレエイメージ

オペラ座バレエとオペラ座・メソッド 300年余りの歴史を持つパリ・オペラ座バレエは、伝統的なクラシック作品を上演し続けながらも積極的にコンテンポラリー作品に取り組み、非常に幅広く豊かなレパートリーを持つカンパニーです。 ダンサーは多様な作品を様々な身体表現で踊りこなすことを求められますが、そうしたダンサーを支えるのがオペラ座メソッドです。 厳格なプレースメントを土台とし、丁寧で繊細なつま先使いやポール・ド・ブラを特徴とするこのメソッドから生み出される踊りは、エレガンスに溢れ、また同時に力強い表現力を生み出します。

オペラ座バレエ学校 輝かしいダンサーを輩出し、オペラ座バレエを支える基盤となっているのが、世界最高峰のバレエ学校であるパリ・オペラ座バレエ学校です。 オペラ座バレエの多くの団員がオペラ座バレエ学校から輩出されるほか、卒業する生徒の多くがオペラ座のみならず、世界各国の様々なバレエ団で活躍しています。 プロのダンサーになるために選び抜かれた生徒たちは、およそ6年の年月をかけ、徹底してバレエに関わる総合的な教育を段階的に受けています。

教師によって伝えられる伝統 オペラ座バレエ学校では、ダンサーを育てるために必要な様々な教育が行われていますが、中核であるクラシック・バレエの指導を行うのが16名の教師で、その全員がオペラ座バレエで活躍した経験を持っています。 オペラ座・メソッドは、ワガノワ・メソッドやRADなどと違い、明確に記された教本のようなものは存在しません。 フランス派の伝統と誇りは保守しつつも、様々なメソッドを取り入れながら発展し続け、教師から生徒へ、あるいは教師からダンサーへ、直に受け継がれてゆくものなのです。
すなわち、「オペラ座メソッド」とひとくくりにしても、指導法は各指導者によって様々です。何を大事にするのか、何をどのような手順で教えるのか。 豊かな経験を持ち、それぞれの個性が光る指導者たちが、伝統を受け継ぎながらも様々な考え方や理論を進化させることで、豊かな教育が施されています。


講習会コンセプトConcept

レッスン風景1 本物のバレエを学ぶ 多くの人が、本物のバレエを学ぶことのできる機会を作りたい。真にバレエを楽しむ人を増やすことで、バレエという文化・芸術の発展に寄与したい。それが、Ai Ballet Academyで開催する講習会への想いです。

職業としてダンサーを目指している方はもちろん、ダンサーを目指しているわけではないけれど、バレエが大好きで一生懸命練習に取り組んでいる方も、なかなか思うようにいかない方も、どの段階、どのレベルにある方であっても、トップレベルの指導者から本物のバレエを学んで頂きたいと考えています。 なぜなら、生徒の可能性は、本物のエネルギーに触れることによって、想像以上の伸びを見せるからです。

そして、講習会で一流の先生から学び、先生の素晴らしいお手本を間近に見て、オペラ座で脈々と受け継がれてきたものを直に感じることは、皆さんにとってかけがえのない大きな経験となります。 そうした経験の積み重ねは、バレエ人生を豊かにするだけでなく、その後の人生を変えるきっかけにもなります。
レッスン風景2 バレエのための身体作りを学ぶ Ai Ballet Academy主催の講習会では、2013年の初回より、毎回身体作りに大変力を注いでおります。 解剖学に精通しておられるマーク・ドゥ・ブエ先生の「バレエテラピー®」をはじめとして、ミュリエル・アレ先生による「ピラティス」、ヤン・サイズ先生による「バー・ア・テール」、そして日本人講師による「アナトミー&コンディショニング」「バレエ栄養学」と、バレエダンサーの身体を作り上げるための様々なクラスを開講して参りました。

レッスン風景3 ダンサーの身体は、音楽家にとっての楽器です。幼少期の頃は、良い楽器を作るために、様々な基礎を身につけ、身体を作り上げなければなりませんし、ある程度身体が出来上がってきた後も、常に手入れをして、踊り続けるための調整を続け、さらに鍛え上げる必要があります。 バレエを習う人にとって何よりも大切な楽器であり、取り替えることのできない「身体」。その身体をどのようにして大切にするかということを、講習会を通して学んで頂きたいと考えております。

一人ひとり身体条件や性格が違うように、一人ひとりその人にあったエクササイズは異なります。一つのやり方に固執するのではなく、様々なエクササイズや理論を学ぶことで、本当に自分が必要とする方法を知ることができます。そして、試行錯誤を繰り返し、自分の心身が本当に良くなる方法を発見し、工夫し続けることが大切です。それこそが、怪我を防ぎ、長く踊り続けるようになるための唯一の方法なのです。


レッスンの特徴Lesson

レッスン風景4 エネルギーに溢れる情熱的なレッスン ヤン・サイズ先生はオペラ座バレエ学校期待の若手指導者として、日々のクラスレッスンの他、バレエ学校の舞台指導やYAGP審査員等、これからのバレエ教育を担う立場にて活躍されています。厳格でありながら、時にコミカルでエネルギッシュなレッスンは、生徒のやる気を引き出し、バレエの真の楽しさを伝えます。

また、各年齢に合わせた指導も印象的です。幼少期には体に力を集めるトレーニングから始まり、バーやセンターではひとつひとつのパ(ステップ)を分解して自然に動きを学べるようにアンシェヌマンが組まれます。年齢が上がるにつれて、細やかで複合的な動きが多くなり、回転やジャンプもダイナミックでやりがいのあるものとなります。フランス派特有の伝統的なアンシェヌマンを多く学べる大変楽しく、ダンサーとしての力をつけられるレッスンです。

レッスンを支える伴奏には、パリ・オペラ座バレエ学校専属ピアニストの土屋裕子さんをお迎えし、本場のレッスンをそのままに再現して頂きます。メソッドによって音の取り方やリズム等は多種多様ですので、フランス派伝統の本物の音楽を体感できる貴重な機会となります。
レッスン風景5 バレエに活かすカニンガム・テクニック コンテンポラリーダンスクラスでは、日本人として初めてマース・カニンガム舞踊団(MCDC)に入団し、10年以上に渡り世界各地の公演に参加してきた水田浩二先生より「カニンガム・テクニック」を学びます。
モダンダンス以降、コンテンポラリー・ダンスへと向かうダンスの流れに大きな影響を与えてきたマース・カニングハムが確立したこのトレーニングは、脚と胴体、舞台空間の方向性に関する意識を強くすることを目指し、アメリカをはじめ、ヨーロッパ各国のバレエ学校で、プロダンサー育成のためのプログラムとして広く取り入れられています。

レッスン風景6 昨今、クラシック・バレエを志すジュニアにとってコンテンポラリー・ダンスは必須となっていますが、日本ではまだ確立されたものを学ぶ機会は多くはありません。様々なスタイルがある中で、体系化されたカニンガム・テクニックはコンテンポラリー・ダンスを始めるためのベース作りとして最適のメソッドです。また、クラシック以外の体の動きや空間に対する意識を学ぶことは、クラシックの基礎をより柔軟かつ強いものへと発展させ、表現の幅を大きく広げます。温かいお人柄の水田先生のクラスは「丁寧でわかりやすい!」とジュニアにも大人気ですので、未経験の方でも安心してご参加頂けます。

エクササイズクラスとしては、ヤン・サイズ先生に「バー・ア・テール」をご指導頂きますが、これはフランスで「Barre au sol」と呼ばれ、古くから盛んに行われている大変伝統的なエクササイズです。ロシア系フランス人バレエ教師のボリス・クニアセフ氏によって考案されたメソッドで、バレエの動きを床で行うことで、ターンアウトや体幹の強さなどのダンサーに必要な筋力や身体感覚を身につけます。今回は合同クラスのため、大人数で一体感を持ってトレーニングをする楽しさを味わえるような、白熱したクラスとなることでしょう。

レッスン風景7 「アナトミー&コンディショニング」では、西洋を起源とするバレエを、日本人の身体でどのように学んでいくかということを考えながら、踊るために必要な解剖学的知識を理論と感覚で学びます。踊りやすい身体を作るためには、「何をやるか」だけではなく「どうやるか」ということを考える必要があります。生徒の年代に合わせて、自分の身体への興味を引き出すクラスです。
夏の講習会でもご好評を頂きました、「保護者のための解剖学」も再び開講いたします。保護者の皆さまのお力で、お子様のバレエ人生が変わるといっても過言ではありません。保護者様が正しい知識を身につけることで、受講生の可能性が適切に開かれるよう、解剖学のさわりをお伝えいたします。

各クラス共に、少ない時間ではありますが、体に対する意識を高めるきっかけや、この講習会後も身体への理解を深めるモチベーションとなることを願っております。


講師プロフィールProfile

ヤン・サイズYann Saïz 1984年、パリ・オペラ座バレエ学校入学。Gilbert Mayer, Lucien Duthoit, Daniel Frank等に師事。1992年パリ・オペラ座バレエ入団。 1997年スジェ、1998年AROP賞受賞。 独特のカリスマ性と長身の美しい容姿を活かし、クラシック、コンテンポラリー作品の主要キャストとして活躍。

ヤン・サイズ エリザベット・プラテル、マリ=クロード・ピエトラガラ、マニュエル・ルグリ等と共に国内外のガラ公演に参加。 主なレパートリーに「コッペリア」のフランツ、「ドン・キホーテ」エスパーダ、「クラヴィーゴ」ボーマルシェ、「ライモンダ」ジャン・ド・ブリエンヌ、「白鳥の湖」ロットバルト、ジェローム・ロビンスの「牧神の午後」がある。 2015年現役引退後、オペラ座バレエ学校教師に任命され、男子第4学年を担当。クラスレッスンの他、生徒の舞台指導やダンサーの指導、YAGP審査員、講習会指導など幅広く活躍。

ヤン・サイズ ダンス風景
水田 浩二 水田 浩二コンテンポラリーダンス
水田 浩二

水田 浩二コンテンポラリーダンス 1969年、高知県高知市出身。日本ヘルス&スポーツ学院ダンス留学科にて、クラシック・バレエ、モダンダンス、ジャズダンスを学ぶ。卒業後、望月辰夫(現新国立劇場舞踊部門プロデューサー)、平林和子(NYジュリアード音楽院ダンス科教授)にモダンダンスを、斉藤梢、橋浦勇、鈴木江美、佐藤勇次にクラシック・バレエを学ぶ。
89年より望月辰夫ダンスカンパニーの主要ダンサーとして、能美健志、軽部弘美らと共に望月辰夫作品“傾いていく風景”“デカメロン”等に出演。同時にゲストダンサーとして、大島早紀子(Hアールカオス)、佐多達枝、正田千鶴、後藤早知子、橋浦勇、佐藤宏、島崎徹らの作品に出演、好評を博す。
97年、文化庁派遣在外研修員として、ニューヨークのマ-ス・カニンガムスクールにてカニンガム・テクニックを、平林和子にグラハムテクニックを学ぶ。
98年、日本人初のメンバーとしてマース・カニンガム舞踊団に入団。以来、パリ・オペラ座、リンカ-ンセンター(ニューヨーク)、テアトル・ド・ラ・ヴィル(パリ)、ケネディーセンター(ワシントンDC)等、世界の主要な劇場に出演。

伊藤 藍衣 伊藤 藍衣オリエンテーション / アナトミー&コンディショニング / 保護者のための解剖学
伊藤 藍衣

伊藤 藍衣オリエンテーション / アナトミー&コンディショニング / 保護者のための解剖学 Ai Ballet Academy主宰
4歳よりバレエを習い始め、谷口 登美子、チエ・トミオカ等に師事。 1997年より東京にてパリ・オペラ座バレエ学校教師マーク・ドゥ・ブエ氏の講習会及び、プライベートレッスンを定期的に受講し、バレエとテラピーを学ぶ。 解剖学的根拠に基づくドゥ・ブエ氏の的確な指導に感銘を受け、解剖学を学び始める。 2003年より1年間フランスパリにてドゥ・ブエ氏に師事。帰国後、本格的にバレエ指導を開始。 2007年より早稲田大学大学院文学研究科修士課程演劇映像学専修舞踊コースにてバレエの指導法について研究後、単位満了退学。
現在はフリーのバレエ教師、ピラティスインストラクターとして活動し、Ai Ballet Academyでは機能的な身体の使い方を重視したクラスを行っている。 近年では、動きの根源である「感覚」や「知覚」といった分野の学びを深め、ダンサーが自分自身の身体を容認し、持てる可能性を最大限に活かすための指導を探求している。

BASI Pilates certified mat instructor
パリ・オペラ座バレエ学校認定教育学Ⅰ・Ⅱ終了
動きの指導者のためのロルフィングセミナー「ホリスティック・システム」第4期修了
©ブログ http://ameblo.jp/ballet-le-parc/

土屋 裕子 土屋 裕子ピアニスト
土屋 裕子

土屋 裕子ピアニスト 1990年より、パリ・オペラ座バレエ学校専属ピアニスト。
当時のバレエ学校校長であるクロード・ベッシー女史により、外国人では初めて任命された。
子供時代はピアノよりもバレエが好きだったが、病気の為にポアントを履いて喜んだのも束の間だった。以後ピアノに専念し、国立音大を卒業後、パリに留学。 マーグダ・ターリアフェロ女史に師事、エコールノルマル音楽院、スコラカントルム音楽院で学び、1983年よりバレエピアニストとして、CRRブーローニュ、CNSMDPパリ高等音楽院、CRRパリ等に勤務。
パリで行われるYouth America Grand Prixヨーロッパ予選のピアノを担当。 2013年パリオペラ座バレエ学校300周年記念の際に始まったオペラ座バレエ学校夏期講習会は、既に3度目の参加となる。

Video DVD
Madame Claudette Scouarnec(元エトワール、パリ・オペラ座バレエ学校教師)の指導によるレペルトワール vol1, vol2

1987年~91年迄 『バレエの本』音楽之友社刊に『パリ便り』を執筆。 2009年~『スワンマガジン』季刊  平凡社刊 に,『パリオペラ座バレエ学校の四季』を執筆中。
1990年に3年に在籍していた、カール・パケット、ジェレミー・ベランガール、はエトワールとして活躍中。 子供達の成長を見守る事に生き甲斐を感じていると同時に、踊りやすい音楽の追求に念を燃やしている。