第9回:バレエ栄養学

 

新国立劇場バレエ研修所をはじめとして、

バレエダンサーに向けた食事のサポートを行う村田先生によるコラムを

今回から数回に渡って掲載いたします。

 

                    

 

こんにちは。

バレエ栄養学の講師、村田裕子です。

 

バレエダンサーにとって、食事は一般の人以上に重要な役割があります。

筋力や柔軟性はもちろん、持久力や瞬発力など、

アスリート並みの身体能力、同時に美しい身体のラインが求められるからです。

 

 

バレエダンサーの食事における3つの目的

バレエダンサーの食事には、3つの目的があります。まずは厳しいレッスンに集中し、バレエの基礎となる身体を作るための食事。ふたつめは舞台で最大限の力を発揮するための食事、3つめはバレエによって起こりやすいケガや故障の予防、回復力を高めるための食事です。さらに、小学生から高校生くらいのジュニア期には、もうひとつの目的が加わります。健全な成長を促しながら、身体と心を鍛えていく食事でなければなりません。

 

これらは日々の食事のバランスをいかに整えるかにかかっています。
バランスのよい食事とは、複数の栄養素が含まれた複数の食べ物を日々ローテーションしながら食べること。食べ物というのは、とても複雑で、複数の栄養素がチームワークで働き、身体の栄養となっていきます。たとえば、筋肉の主材料になる栄養素はたんぱく質ですが、肉だけを食べてもそのままでは筋肉にはなりません。肉を食べたらビタミンB2の豊富なものを食べてはじめて、身体の中でうまく活用できるようになるのです。

 

食事のバランスがとれていれば、無理な減量をしなくてもベストな体調や体型を保つことができるはずです。毎日の食事の積み重ねが身体に心にプラスをもたらしてくれるのです。
逆に毎日の食事をおろそかにすれば、マイナスが積み重なって、持てる力を発揮できず、身体や心のどこかの歯車が狂ったりします。食事もバレエのレッスンと同様、日々の積み重ねが大切です。

 

豊かな食卓の大切さ

スポーツの現場では科学を積極的に活用するのに伴い、競技力向上のためにスポーツ栄養学の研究がすすみ、アスリートに対する栄養指導や食事の管理が積極的に行われるようになりました。しかし、バレエはスポーツと異なり、点数や順位を競うものではありません。
優美かつ繊細な芸術です。私はバレエダンサーであっても、身体作りともに、食べることの大切さや楽しさ、おいしいものを食べたときの感動も絶対に置き忘れてはならないと思っています。

 

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私たちが何気なく口にしている食べものには、さまざまな力を秘められています。食べ物の力というと身体を作る栄養素をイメージしますが、食材の色や形は視覚に、香りは嗅覚にと、私たちは五感を使って食事をしています。
みんなでおいしい食卓を囲むと楽しいシチュエーションであるはずです。おいしさの感動を忘れて、単一の栄養素を含むサプリメントを追いかけたり、無理やり食べたり、食べたいものを我慢したりしたら、食べることがつらく、罪悪感のあるものになってしまいます。また食べ物をよく噛むという行為は、唾液が分泌し、脳が活性化されます。内臓を鍛えることにもつながります。

 

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バレエダンサーの栄養サポートは、バレエダンサーの数だけ存在し、正解はありません。
バレエダンサーひとりひとりの身体、心、目的にあわせてすべて違います。
バレエダンサーの食事といっても、特別な食材も必要としません。秘密の食事法もありません。決して難しいものでも、手間がかかるものでもないのです。意識したいのは、いつ何をどう食べるかです。

 

ご自身の身体について学ぶことを軸として、その上でパリ・オペラ座独特の表現力やテクニックを磨くことのできる総合的なプログラムを取り入れたこの講習会では、ジュニアの生徒さんには食の自立を目指し、指導者や保護者の方には正しい栄養の知識とスキルを身につけていただきたいと思っております。
バレエ栄養学を受講していただくことで、ご自身、生徒さん、お子様の食生活のよいところ、不足しているところに気づき、バレエに必要な身体作りを客観的に見つめなおすよき機会になることを願っております。

 

 

(文・村田裕子)

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