第2回: 初級クラス センター・レッスンの様子から
初級バレエのバー・レッスンに続いて、センター・レッスンの様子です。
身体の使い方を細かく学ぶことができるマーク先生のレッスン。
妥協を許さない熱意に満ちた先生の指導は、生徒の力を120%引き出します。
センターでは、バー・レッスンで学んだ「正しい身体の使い方」「正しいプレースメントを、バーという支えがない中でどう実現するかということに焦点が当てられていました。
先生の理論は独特で、というより、解剖学に基づき、きちんと理論化されているため、一般的にレッスンで指導者が使う言葉とは異なる言葉が多く発せられます。
というのも、一つのパにおいて起きる様々な事象を、解剖学的にとても細かく見て、その細部までを説明しようとされるからです。
例えば、バットマン・タンデュ。バレエクラスで行われる指導において、一般的に使われる指導言語として多いものは、以下のようなものだと思われます。
ドゥヴァン(前)の時には「もっと開いて」「踵を前に見せるように」など、ア・ラ・スゴン(横)では「もっと開いて」「踵を下に」など、デリエール(後ろ)では「もっと開いて」「膝を横に向けて」など。共通して「アン・ドゥオール / ターンアウトして」「内股にならないように」「付け根 / 股関節から開いて」など。もちろん先生によって、これ以外にも様々な指導がされるので、少々極論ではありますが、一般的に多いのはこのような感じではないでしょうか?
マーク先生ももちろん例外ではなく、このような指導もされるのですが、必要に応じてさらに具体的な指導をされます。それがとても理論的、かつ細やかなのです。
例えば、昨年のワークショップで行われた中から、同じくバットマン・タンデュで行われた指導が以下のものです。
ドゥヴァンの時には「親指と中指を意識しながら腿を引き上げて」、ア・ラ・スゴンでは「中指を意識して」、デリエールでは「足先ではなく腿を意識して」というような具合です。それぞれ見本を見せながら、その言葉から得られる意識を通じて、アン・ドゥオールが深まる様子を見せてもらえるので、視覚から得た情報と言語から得た情報が相まって、生徒の意識へと入っていきます。そこからさらに、触れる指導、つまり触覚から得られる情報も加わり、より具体的に動きが改善されて行くのです。
その他、引き上げと床を押す感覚を掴むための、ルルヴェを伴ったバットマン・タンデュや、アン・オー(アン・クロンヌ)で行った後にポール・ド・ブラをつけて行うピケの練習等、独特のアンシェヌマンが組まれ、その全てにおいて、プレースメントの改善を目的として練られた指導がされました。
このように、「プレースメントの改善」を重視した指導が、マーク先生のレッスンの特徴ですが、では一体、プレースメントとはどのようなものなのでしょうか?
プレースメント(placement)とは、「体が静止または動いている状態で、隣り合っている部位どうしの位置関係を指し、その結果、体の重さがどのように配分されるかを見るもの」i です。まっすぐ立っている時の骨盤や胸の位置から、脚や腕が動きだすに連れ、骨盤や胸など身体の各部位の位置が変わっていきます。すなわち、動きとともにプレースメントが変化するということです。例えば、アラベスクをする時、脚が後ろに上がるにつれ、骨盤は最小限に前に傾き、それにともなって胸郭が前へと動きます。
マーク先生は、骨盤や背骨のあるべき位置や、正しい傾き、また、それを保つために使われるべきである、筋肉の方向や力の加減等を、それぞれの動きの中で細かく指導して行きます。
簡単に言うと、どこに何があるべきか、それをどう保つかを教える、ということです。
足を180°開いた「完璧なアン・ドゥオール」をしながら動くということは、バーである程度できたと思っていても、センターの動きの中で常に行い続けるのは大変難しいことです。特に身体条件がバレエに適していない場合や、股関節をはじめとした身体の使い方にクセがある場合、それを直すことは、生徒にとっても指導者にとっても、かなり根気がいるものです。
ですが、マーク先生の的確で合理的なレッスンを続けて受けていくと、理論を守ることによって、身体はもっと自由に、シンプルに、機能的に動くものなのだ、と実感することができるようになるのです。
要求は厳しいけれども、全ては自由に踊るためであるマーク先生のレッスン。
生徒の可能性を120%伸ばす指導を、ぜひ御体験ください!
i : ヴァレリー・グリーグ著、上野房子訳、1997、『インサイド・バレエテクニック』
(2014年5月25日)