2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子

第6回: 2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子

皆さまこんにちは。
Ai Ballet Academy主宰の伊藤藍衣です。
今年もパリ・オペラ座バレエ学校マーク・ドゥ・ブエ先生の夏期講習会に向けて、こちらのコラムにてクラスの様子やレッスンに役立つ情報を書いていきたいと思います。
昨年のクラスの様子からスタートし、今年新設のコーチング・アナトミックや指導者コースに関するお話へと進めていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

まず2015年の初回は、昨年のジュニアクラスの様子をお届けします。

昨年は全6日間の講習会の中、ジュニアクラスは3日間のスケジュールでの開催となりました。
バレエの基礎を作るために大切な時期であるジュニアクラス。
テラピーとバレエのセットで、どちらのクラスもシンプルな動きを何度も繰り返しながら体を作り上げていきます。

テラピーでは、皆さん慣れない動きに戸惑いながらも一生懸命に取り組んでいました。

2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子

途中、繰り返す回数の多さに疲れや辛い表情を見せるような生徒さんもいましたが、体に覚え込ませるためには、この「繰り返す」というプロセスがとても大事です。
何度も反復するうちに体が変化していき、バレエに必要な筋肉や感覚が目覚めていき、今までバレエのレッスンの中でできなかった動きが自然とできるようになっていきます。疲れてきたところからその先は、もう無理!と思う程とてもキツいのですが、そこを超えるからこそ強く美しい体と踊りを手に入れることができます。テラピーによって体が目覚め、良い状態へ変わっていく感覚をぜひ楽しんで頂きたいと思います。

バレエクラスでは、最初から最後まで、正確なポジションとプレースメントを根気よく見直していきました。昨年は、足の使い方、特にルルヴェの立つ位置に問題のある生徒さんが多かったように思います。それは足だけの問題ではなく、立った時に腰が乗るべき位置や、腿の位置、足の筋肉の保ち方等、様々な要因が重なって起こる問題です。マーク先生はそのひとつひとつの要因を、素早く的確に、目につく生徒を手当たり次第に次から次へと直していきます。
世界でもトップクラスの第一人者である先生に対して失礼かもしれませんが、一瞬の迷いもなく、生徒の体の各部位をあるべき位置に導く姿は、まさしく職人とも言うべきもの。オペラ座バレエ学校には様々な先生がいらっしゃり、それぞれの先生が個性豊かに指導をされていますが、中でもやはりマーク先生の真骨頂はこのプレースメントの改善であり、それに対して右に出る先生はいらっしゃらないのではないかと思います。

2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子 - 第5ポジション

また、見本も本当に素晴らしく、第5ポジションとはこのようなものなのか、足の出し方はこうなのかと、毎回思わずため息をついてしまいます。足首と足裏、そして足指の使い方をよくよく見ていると、全ての動きのベースは足にあるのでは、と思う程です。

ジュニアクラスに限らず、ぜひご参加頂く方には、先生の足の使い方を目を凝らして集中して見てみて下さい。特に5番からバットマン・タンデュを行う時、5番から足がどう動き始め、途中どのように動き、何がどうなって足先が伸びていくのか。とてもゆっくりとお手本を見せて下さるので、そのイメージをしっかりご自身の中に取り込んで頂ければと思います。(慣れないアンシェヌマンに戸惑うこともあるかと思いますが、くれぐれも順番を覚えることに終始することのないように・・・!)

2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子 - アチチュード

センターでは、横へのピケ・パッセと、そこから派生する回転やバランス等が多く、特に軸足をアン・ドゥオールして使うことをほとんどの方が注意されていました。軸がきちんと保てなければ、全ての動きが曖昧になってしまいます。バレエの特徴として「Clarity」つまり「明確さ」「明晰性」「純粋さ」というものがありますが、無駄なくクリアで美しい動きをするために、軸足および軸脚の使い方を早い段階でマスターすることはとても大切です。

2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子 - ピケ・パッセ

昨年のコラムにも書かせて頂きましたが、マーク先生が重視されているのが、触られた時の感覚を利用した指導法です。口だけで指示をするのではなく、筋肉をどのタイミングでどのように使うのかを、触覚を利用してガイドするという方法は、一見何気なくやっているように見えてとても難しいものです。しかしながら、生徒としては先生の手がガイドとなり、より早く、確実に動きの感覚を掴むことができるため、バレエの指導に欠かせない重要なポイントです。受講生の皆さんは、先生にガイドされた感覚を良く覚え、普段のレッスンに活かして頂ければと思います。
また、指導者の方でクラス見学をされる方は、先生の触れ方に特に注目して頂ければと思います。

 

最後に、マーク先生から指導者として学ぶべき姿勢について。身体条件がよく、関節が柔らかく筋力もあるお子さんは、脚を高くあげることができ、反射神経もよく、一見うまく動けます。しかしながら、本当に正しくできているわけではなく、動きに癖がある場合も多いのではないでしょうか。そして、そういった明らかだけれども、細かく微妙ななんともいえない癖を直すということは、指導者として時に難しく感じるあまりに見逃してしまうこともあり、どうしたらうまく指導できるかと悩む場面でもあります。
こうした場面で、マーク先生はどう指導されるのか。何か秘訣があるのかなと思いましたが、特に変わったことをするわけではなく、ただただその癖を丁寧に、何度も、「違います、こうですよ」と指導し続け、繰り返し正しい動きを伝えてらっしゃいました。子供だから言ってもわからないかな・・・ではなく、子供でもきちんと繰り返し伝え続ければ、必ずできるようになるという信念を垣間見る瞬間です。最初はピンと来ないような表情を浮かべていた生徒さんも、2日目、3日目と日を重ねる毎に、自分で気づき、自分で癖を直せるようになっていきました。

2014年第2回講習会のジュニアクラスの様子 - プチソ

舞台やコンクールで華やかに踊ることは楽しいことですが、その反面、ジュニアという大事に時期に、いかに地道に基礎を築けるか。将来ダンサーを目指すか否かに関係なく、クラシック・バレエを学び上達を望むのであれば、避けては通れない道だと思います。
反復させること、そして正しいことを伝え続けるということは、根気のいることです。それでも常に穏やかに、きちんと生徒に向き合い続ける先生の姿に、教育者としての姿勢を学ばせて頂いています。

(2015年5月25日)

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