2014年第2回講習会の一般クラスの様子

第7回: 2014年第2回講習会の一般クラスの様子

7月に入り、いよいよ講習会も迫ってきました。
ジュニアクラス、一般クラス共に、昨年参加して楽しかったので、あるいは良かったので、今年も申し込みます!という方が多く大変嬉しく思っております。

また、大人クラスご参加の方では、昨年とても難しかったけど楽しかったので、ヒヤヒヤですがまた申し込みます、という方も多く、そうしてチャレンジすることを楽しんで下さる姿勢に感動しています。 実はプロフェッショナルクラスも同様です。

昨年かなりハードな内容だったのですが、それがむしろダンサーの皆さまには良かったようで、大変だけど楽しかった!また出ます!というお言葉を頂き、こうしてマーク先生のレッスンの素晴らしさがきちんと伝わり、リピートをして頂けることは、私どもが最大の喜びを感じることができる嬉しい瞬間です。ありがとうございます。

さて、一般クラスの様子ですが、ジュニアクラスに比べ、テラピーもバレエも難易度が上がり、皆さんかなり苦戦されていたように思います。

テラピーは動きのバリエーションも多く、柔軟性やコントロール能力の必要性はもちろんですが、何よりも「自分の物質的な身体と意識や感覚をどのように繋げて動くか」 ということが一番重要だと感じました。というのも、テラピーの動きを行うためには、外側の大きな筋力はそれほど必要ではなく、それよりも内側の、いわゆるインナーマッスルをうまく使えなければならないからです。多くの人にとって、インナーマッスルはテラピーを行えば自然と使えるというわけではなく、自分の意識をどうやってそこに持って行くか、自分自身で探し続け、感じながら行わなければ使えないものなのです。動きの形ばかりに囚われるのではなく、どうしたらその動きを容易にできるのか、動きの本質を考えることがとても重要です。

2014年第2回講習会の一般クラスの様子

バレエクラスのバーレッスンは基本に忠実に。バレエの型の中で、体の各部位のあるべき位置が、動きの連続の中でどう変化するか、あるいは保たれるかを丁寧にご指導下さいました。 また、センターレッスンでは、バーレッスンの中で感じ作り上げた軸を空間の中でどう感じるかが重要です。特に、アダジオやピルエット等は、アラセゴンのプロムナードやトゥールが多く入り、軸脚のコントロールや身体内部が繋がる感覚を作り上げられなければ、どう頑張ってもうまくできないことを多くの方が感じたと思います。

2014年第2回講習会の一般クラスの様子

後半はジャンプや回転もしっかりと。先生は本当にお元気で、いつも年齢を感じさせないパワフルなレッスンに驚きます。ジャンプも回転もこの通り。

2014年第2回講習会の一般クラスの様子

さて、ここで「基礎の基礎」という話を発端として、指導を受ける側が持つべき意識について少し書きたいと思います。バレエの基礎というと、色々な捉え方があると思いますが、代表的なものとしては、ターンアウトをして、引き上げをして、ポジションを守って、あるいは床を押して、背骨を長く、または音楽に乗って、リズムを守って、等というようなものが挙げられるのではないでしょうか。クラシック・バレエには様々な決まりがあり、それらを守るからこそバレエはバレエになりえます。
では、基礎の基礎とは何かというと、先に述べたインナーマッスルの繋がりの感覚を、様々なバレエのポジションや動きの中で感じ続ける能力であり、さらにはインナーとアウターの連動性であるのではないかと思います。要するに、バレエの動きを上手く行うために大切な基礎的な知覚能力ということです。この能力は骨格や筋肉の質といった生まれつきのものもありますが、習慣や環境等による後天的なものも含みます。良くないレッスンによって身につけてしまった癖は、この基礎の基礎を妨げる大きな要因です。逆に、バレエを習っていなくても、基礎の基礎という身体の機能性が整っている人は、バレエを習えば驚くほど早く上達する可能性があります。

オペラ座の先生の中でも、マーク先生は解剖学的な理論や方法論を丁寧に教えて下さる先生だと思います。では、私たちが真に必要としている「基礎の基礎」という部分に関しても細かく教えて下さるでしょうか。実は教えて下さらない。私はそう思っています。また、それで良いとも思っています。
なぜなら、先生はオペラ座バレエ学校の先生だからです。言い方を変えると、エリート教育の中で選抜された生徒達を鍛え上げるためにいらっしゃる先生だからです。
そこではプロフェッショナルなダンサーになることを目的として、身体条件や踊る才能を持ち合わせているかどうか、入学試験によって厳しく「選ばれた」生徒しかいません。
その選ばれた生徒達を数年かけてプロフェッショナルに育て上げるための教育方法には、基礎の基礎というものはほとんど含まれないというのが、私の持論です。というのも、そのような選ばれた者しか存在しない場には、そういった本当の意味での基礎をクリアしている生徒しか存在しないからです。仮にクリアできていない生徒がいたとしてもふるい落とされていきます。そして、そのことによって世界最高峰のバレエの水準が保たれているのです。(余談ですが、そうした場において確立されたメソッドが、ある意味日本の多くの指導者の方の頭を悩ませる大きな理由でもあると思います。)
そして、そのような場における指導法は、実のところ、基本的には同じような場においてでしか、正しく機能することはないと言えるのではないでしょうか。
つまり、様々な環境が異なる日本のバレエ教育の現場においては、マーク先生の指導と同じことをしても全く同じにはならないということです。

だからといって、私たちがマーク先生のような一流の指導者の方々から学ぶことが無駄なのかというと、そうではありません。本当のバレエがどのようなものか知らなければ、どんなレベルであれ、自分を磨くことは難しいでしょう。本物を身近で見る、体験する、ということは何よりも大切なことです。

ですが、ここで最も大事なことは、そのような一流の先生の指導を、自分が体験し、自分で学び、自分で考え、自身の感覚を頼りに試行錯誤を繰り返し、最終的には自分で選択するということ。つまり「自己責任の意識を持つ」ということです。
先生から教わったことは、自分の身体や特性に合うかもしれないし、合わないかもしれません。偉い先生が仰ることが全て正しいとは限らないのです。
先生から素直に学ぶことはとても大事です。自分勝手にやって良いというわけでは決してありません。ですが、特に思春期を迎え、判断力も身についてくる頃からは、常に自分の身体の構造や感覚と、指導者の先生の仰ること、その両方を見つめながら努力することが必要でしょう。 そうした意識を持つことで、一つの機会から得るものは大きくなり、さらには大きな視点で物事を見ることができるようになります。それはバレエを続ける上で、またバレエ以外の場面においても、人生を自由に楽しむための大きな糧となります。
こうした講習会は、先生からも、一緒にレッスンを受ける仲間でありライバルでもある生徒の皆さんからも、多くの刺激を受け、たくさんの学びや気づきを得ることができる絶好の機会です。ただ参加するだけでも成長できる機会ではありますが、そこで「自分で考える」ということを意識することができれば、学びは何倍にもなることでしょう。さらに、そうして得た学びの中から、自分に必要なことを選び取ること。ぜひそれも意識してみてください。この講習会が皆さまにとって実り多きものになることを願っております。

(2015年7月7日)

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